平山満紀

お正月の伝承は消え果てようとしているが、残っているものもある。お鏡餅を飾り、しめ縄や門松を飾り、丸餅をいただく。歳神様をお迎えするという意識を持ち続けている方達もいる。 鏡餅は蛇がとぐろを巻いている姿。神様へのお供えではなく、古代には蛇そのものを御神体としていた。丸餅は蛇の卵そっくりの形であり、食べて蛇の力を身に取り入れようとしたのだろう。 蛇は、手足のない独特の姿、獲物を捕える目の力、有毒性など、畏怖すべき数々の性質を併せ持つが、崇拝されてきたのは、その壮絶な生殖力のためでもある。 昨今、セックスレスが増えているという調査があり、社会的関心も集め始めている。委縮し疲弊している現代日本人。生殖力の象徴である蛇信仰から、再び命の水を飲めるとよいと思う。古来の信仰にはあったけれど、現代日本人の意識から失われてしまったのは、性とは戦慄をもたらすほど怖ろしく強い力であり、創造力も魔力さえもそこから溢れ出る、という見方だ。セックスレスとはその力から切れて生きることになろう。社会も新生の活力を失うことになり、やはり危惧すべきだと思う。